それは20年ほど前、ある1人の患者さんとの出会いがきっかけでした。
その患者さんは中年男性でした。
仮にAさんとしておきます。
Aさんは、癌のために、癌と一緒に、呼吸に大切な横隔神経を切ったところでした。
横隔神経を切ったということは、自分で呼吸ができないということなんです。
呼吸というのは、横隔膜が動いて、肺が縮んだり、広がったり。
これが呼吸です。
だから横隔神経が切れて、横隔膜が動かなくて、自分で呼吸ができない。
だから人工呼吸器がついていました。
そして当時、人工呼吸がついているということは、一生病院にいなくてはならない。
その状態をみた時に、わたしはこう思いました。
せっかく癌を治療して、癌はなくなったというのに、人工呼吸器をつけていなければならない。
ということは、一生病院から出られない。
一生病院から出られないんだったら、意味がないんじゃないか。
もったいないんじゃないか。
呼吸ができるようになったら退院できるのに。
この状態をなんとかしたい。
いろいろ考えたわけです。